2007年2月22日に誕生したNPO法人芸術家のくすり箱は、本日2022年2月22日に法人化15周年を迎えました。ここまで15周年歩みを進められたことは、一重に本法人に関わる皆様のお力添えと深く感謝申し上げます。
2007年の発足当初は、日々の芸術活動を真剣に行いながらも、痛みや怪我は当然とばかりに目をつむる状況のアーティストに、まずは自身のカラダに目を向けることからと、少しでもコンディショニングに役立つ情報を伝えよう、健康診断を安価で受けてもらおう、そして医療従事者には、アーティストのヘルスケアやキャリアに理解を深めてもらおう、とセミナー活動から始めました。
2008年には、芸術家の健康に関するニーズ・実態調査を、オーケストラ、バレエ、演劇の3つの芸術ジャンルに対して行い、報告書にまとめました。2012年には、伝統芸能を加えた4つのジャンルでの実態調査を再度行い、芸術家のおかれる実態を客観視することで活動指針を多くの方と共有できました。この報告書は、労災への特別加入枠に芸術家が新たに入ることの根拠のひとつとして使用されたと聞き、我々の活動が芸術家の職環境改善に貢献したことを大変嬉しく思っています。
2010年には、芸術活動によるケガや故障によって活動が困難となった芸術家の復帰に向けた治療やリハビリを資金と情報の両面から支援するヘルスケア助成プログラムを開始し、今までに4名のダンサーが舞台活動に復帰しています。2015年からは、文化庁の委託事業として、2019年からは東京都歴史文化財団の助成を受け、バレエ、コンテンポラリーダンス、演劇といった分野での公演帯同サポートが始まり、組織的にアーティストを支援する体制と、その必要性を現場に浸透させる活動をすすめています。また、2016年には、芸術家の活動環境におおいに関わる劇場関係者・制作者向けに公演救急ガイドをまとめました。この年は、ニューヨーク、トロントの視察ツアーも行い、海外のアーティスト、カンパニーの活動環境や医療者等の実践するサポートやその姿勢を直に感じることができ大いに刺激を受けました。
そして最近の大きな活動に、2019年から始まった「ダンサーズヘルスケアトレーナー認定セミナー」があげられます。アーティストのヘルスケアサポート活動を広げていく中で、最もニーズの高いダンサーの活躍をサポートするためには、多様な知識と経験をもった人材を増やしていくことが、我々の活動を活性化していくうえで不可欠と考え始まったものです。今年は3期目を終え、更に「チームくすり箱」として我々の仲間が増えていくことを実感しています。
この15年で、2011年に我々は東日本大震災を経験し、自然災害によって芸術活動が停止する現実に直面しました。その一方で、被災から回復する過程に、芸術に触れる喜びが欠かせないことも経験しました。「アーティストの元気は社会の元気に」という本団体のキャッチフレーズは、正に東日本大震災を経験した誰もが実感したことと思います。
設立当初の2007年と比較すると、本法人の活動も様変わりをしてきました。アーティストのヘルスケアに対する活動は、我々がいなくても十分に機能するようになったのでは?と思いかけた頃、新型コロナウィルスによるパンデミックで、芸術界は地球規模で大きく打撃を受けました。日本において、まだまだアーティストのキャリアは不安定であることを考えると、キャリアの基盤に欠かせないヘルスケアには、まだまだ「芸術家のくすり箱」が関わる可能性は残っていると私は考えています。
来る20周年に向け、芸術家のくすり箱は、芸術家の職業的なケガの予防やよりよいパフォーマンスのためのコンディショニングなどヘルスケアの面から芸術家のサポートを、今後も続けて参ります。多様に変わる芸術家を巡る環境の中で、芸術家が元気に活躍し、多くの人々が豊かな心を創造できる社会の実現に向けて、芸術の持つ力を信じ、芸術を通じた心豊かな社会の実現に貢献したいと思っております。どうぞこれからもご支援、ご活用頂きますよう、よろしくお願い申し上げます。
2022年2月22日
特定非営利活動法人芸術家のくすり箱
理事長 水村真由美