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[食事力シリーズ]夜型でも大丈夫!コンディショニングは自分流

芸術活動と食生活

 もっといいパフォーマンスができるようになる魔法の食べ物があったらな......。そんな風に空想したことはありませんか? そんな魔法はありませんが......。芸術活動の質を高めることと食事は、実はおおいにつながっています。
 食事のとり方が成績を左右するアスリートの場合、「スポーツ栄養士」という専門職が食事・栄養面のサポートをしていることがあります。芸術家の場合は、どうでしょうか? 0.01秒、1ミリを競うことはなくても、アスリートに勝るとも劣らないほどの運動量があったり、長丁場の公演・撮影期間を乗り切らなければならなかったりと、食事の効果に期待する場面はいくつもあります。しかし、芸術活動を専門的にサポートする専門職は確立していませんし、トレーニングやコンディショニングのためのプログラムを設定する習慣もあまりないのが現状です。だからこそ、ご自分で、「自分の活動にみあった食事を実践する力=食事力」がパフォーマンス向上には欠かせないといえるでしょう。

芸術活動を支える「食事力」の基本

  1. 芸術活動を支えるタフな身体をつくる食事
  2. 酷使した心身を回復させる食事
  3. 心を豊かにし、感性を高める食事
このようなポイントをおさえた食事について、別掲のコラム「不規則な生活でも元気なからだをつくる食事」「本番前後の効果的な食事のとり方」でもいくつかご紹介していますが、この「食事力シリーズ」ではさらに具体的な内容をお伝えしていきたいと思います。

 どんな芸術作品も、その基本は人間。気力や精神力は不可欠ですが、肉体のメンテナンスを忘れてしまっては、パワー不足、持久力不足になり、気力や精神力にも影響を及ぼします。
 人は一生のうちに約10万回の食事をとります(3回×365日×90歳=98,550回)。この回数は、栄養補給の回数だけを指すものではありません。食事を通して安らぎを得たり、食卓を共にする家族や仲間と笑ったりすることが約10万回あることを意味します。こうした食事に伴う行動が、ライフスタイルの核となって芸術家の感性を育て、豊かな芸術作品を生み出す気力と体力を育むことになるでしょう。

不規則で夜型が心配?

 「"1日3回の食事をとる"といわれても、仕事の時間が不規則だから、そんなの無理~!!」とあきらめていませんか。
 「規則正しい食事」は、朝食は7時、昼食は12時、夕食は8時というように、みんなと同じ時刻に食事をすることは限りません。たとえば、身体にとって規則正しいとは、「食事と食事の間隔がある程度一定している状態」ととらえます。夜勤のある看護師さん、タクシーの運転手さん、消防や警察の関係者など、世の中には、人とは違う食事時刻の人はたくさんいます。
 芸術家も、リハーサルが夜遅くまで続いたり、昼と夜の公演があったりと、いろいろなケースがありますが、夜型がイコール不規則とまではいえません。

 「私の生活は不規則で夜型だから、理想的な食生活は無理!」とあきらめる必要はありません。"不規則"だと思っている生活の中からでも、生活の「パターン(型)」を見い出すことも可能です。その「パターン」を見い出すことができれば、それに応じた行動を計画的に起こすことができます。
 例えば、バレエ教師のAさんは、毎週月曜日がオフで、火曜日・水曜日は午後から夜遅くまでバレエを教える仕事(レッスン)が入っています。......という場合、Aさんは、曜日ごとに仕事のスケジュールが決まっているため、曜日ごとに仕事を中心とした生活のパターンを見い出すことができます。そのパターンが見つけられれば、仕事時間を除いた時間帯で、食事をとる時刻や睡眠時間が必然的に決まってきます。食事をとる時刻が決まれば、それに応じて食べるメニューや量をバランスよく配分する、といった具合に計画的な行動をおこすことができます。
 公演やツアー、撮影などで生活のパターンが見つけにくい時も、予めスケジュールを把握しておけば、計画的に食事や睡眠がとりやすくなります。

★この流れをフローチャートにすると

・体調・体型などをどのように保ちたいか・変えたいかを考える
              ↓
・自分にみあった食事(量・内容)について知る
              ↓
・1週間のスケジュールから、今日1日のスケジュールを確認
              ↓
・「いつ(何時ごろ)」食べるのか?を決める
              ↓
・「何を」「どこで」食べるか?を考える
(コラム「不規則な生活でも元気なからだをつくる食事」を参考に)

*外食のときに便利なお店をリストアップしておく(メニューの特徴など)とgood!


夜遅い時間に食べるときのポイント

 夜時間の過ごし方は、その日だけでなく翌朝の目覚め(=1日のスタート)にも影響します。「夜型」になりがちな芸術家としては、夜、寝る前の食事のポイントをおさえておきたいもの。ボリューム(エネルギー量)が多過ぎると、おなかがもたれて眠れない、肥満の一因になる......ということがありますから、程よい満足感が得られ、心地よく眠れるような内容にしたいものです。
 そこで、夜遅い時間に食べても"食事と睡眠"の質を高めるポイントをご紹介します。

■夕食が遅い時間になるとき

  1. 昼食と夕食に当たる食事が5時間以上あくときには、その間に軽食をとるのも一案。遅い夕食で食べ過ぎることを防ぎます。
  2. ・夕食と軽食の"量・内容"は、食後の活動量に応じて調整する。

  3. 夕食は1日の疲れをとるためのリラックスタイム♪ 好きなものをとり入れて、手軽に用意できるものを。
  4. ・皿数は少なくてもOK!
    ・味がさっぱりしているもの、寒い季節には身体が温まるものなどが向いています。

  5. 脂肪の多い料理は消化に時間がかかるため、遅い夕食では、脂肪を控えたメニューがおすすめです。
  6. <おすすめメニュー>
    ・シチューやポトフ、具だくさんスープ・汁→ 仕上げに卵や粉チーズなどを入れても、おいしい!
    ・おでん
    ・お鍋
    ・麻婆豆腐
    ・親子丼
    ・肉や魚の焼き物・蒸し物など→ アルミホイル、クッキングシートなどを使うと便利
    ・手間いらずの野菜→ 大根おろし、スティック野菜、かいわれ大根、クレソン、プチトマトなど

    <量を控えたいメニュー>
    ・とんかつ、唐揚げなどの揚げ物

■(夕食をとったのに)夜食もとりたいとき

眠りを妨げないように、量は夕食よりも少なくする。

<おすすめメニュー>
・煮込みうどん
・雑炊
・パンスープ→コーンスープ(インスタントでもOK)などに、トーストしたパンをプラス

<量を控えたいメニュー>
・コーヒーやアルコール飲料 →カフェイン・アルコールは安眠の妨げになるため、ほどほどに。


夜遅くてもオススメのレシピ

【かき玉うどん】

遅い時間に帰宅したときやお腹がすいて眠れないときに。 消化のよいうどんと卵で作ります。とろみのあるつゆで身体の芯まで温まります。

●材料 1人分
冷凍うどん又はゆでうどん・・・1玉
めんつゆ・・・1人分
卵・・・1個
長ねぎ・・・5cm
水溶き片栗粉・・・片栗粉と水を各小さじ1ずつ混ぜておく
焼のり、おろし生姜・・・各適宜

●作り方 
 1.長ねぎは斜めうす切りにする。卵は割ってよく溶いておく。
 2.鍋にめんつゆを入れ、うどんを入れて温める。
 3.うどんが温まったら、沸騰したつゆに水溶き片栗粉を入れてひと混ぜする。
 4.とろみがついたらとき卵を少しずつ流し入れ、卵が浮きあがったらゆっくり混ぜる。
 5.長ねぎを加えて火をとめる。器に盛り、ちぎったのりとおろし生姜をのせる。

【ハニーホットミルク】

寝る前に甘いものが欲しくなったら、温かい牛乳にはちみつを少し入れてみて。穏やかな甘みと香りを味わいながら、入眠前のゆったりした時間を楽しんではいかがですか。

●材料 1人分
牛乳・・・カップ1杯
はちみつ・・・ティースプーン1杯

●作り方 
 1.耐熱性のカップに牛乳を入れ、電子レンジで温める。(500W 1分30秒)
 2.はちみつを入れてよく混ぜる。

【カモミールティー】

リラックスタイムを充実させるアイテムとして、黒豆茶、そば茶、ルイボスティー、ハーブティーなどカフェインレスの飲みものは用意しておきたいもの。 ハーブティーのひとつであるカモミールの花言葉は「あなたを癒やす」。香りには安眠やリラックス効果もあると言われています。

●材料 1人分
カモミールティー・・・ティーバッグ1つ
熱湯・・・カップ1杯

●作り方 
 1.カップにティーバッグを入れ、熱湯を注ぐ。
 2.2~3分蒸らす。好みで、はちみつやミルクを入れる。
 
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執筆:《パフォーマンス 食サポート》チーム(岸昌代、吉田美代子)  制作:NPO法人芸術家のくすり箱 [2014.12作成]