芸術家のくすり箱は、ダンサー・音楽家・俳優・スタッフの「ヘルスケア」をサポートし、芸術家と医師・治療師・トレーナーをつなぐNPOです。
  • TOP
  • 芸術家のくすり箱とは
  • セミナーに参加する
  • ヘルスケアサポート
  • 実践!芸術家のヘルスケア

俳優の職業病とワンポイントアドバイス

日本のプロフェッショナル劇団36団体のアンケートから

 公益社団法人日本劇団協議会加盟劇団のうち、36劇団の俳優の方からご協力をいただいた、「芸術家の健康に関する実態・ニーズ調査」の報告書が発行されました。数々の興味深いデータの中から、いくつかをご紹介します。

演劇活動の怪我・故障は「のど」と「腰」に

 演劇活動によって、治療を要するほどの怪我・故障を経験した人は、68.8%。その部位は、「腰」「頭部」(のど等を含む)「足・足指」「ひざ」が多く、具体的な傷病名は「のどポリープ・声嗄れ・炎症」が最も多くあげられています。仕込みなどの荷物運びを俳優が行う劇団もあり、「ヘルニア・椎間板損傷」「ぎっくり腰」「腰痛」も多くみられます。

 怪我・故障の主な原因は、「疲労」「使いすぎ」と慢性的な原因が約半数ですが、「誤った身体の使い方」「技術的な失敗」「環境(床や道具など)」がそれぞれ約10〜15%にのぼるのは、他の[バレエ][オーケストラ][伝統芸能]に見られない特徴です。


治療・リハビリ「休めない」「治療費負担」

 怪我や故障などの際に困ったこととしては、「休めない・治療の時間がとれない」が最も多く、「治療費の負担」がそれに次いでいます。「完治しない」「医師の演劇活動への理解不足」等の治療面もあがっています。

パフォーマンス・技術向上のために

 パフォーマンス・技術向上のために知りたいこととして、「芝居・身体表現・身体の使い方」や「歌」など、舞台上の表現に直接結びつく技術を求める声が多くあがっています。また、「声のトレーニング・コンディショニング・出し方」をあげる人も多く、のどの怪我・不調の多さを反映しているようです。

俳優業を理解した医師や治療師と連携を

 俳優の健康管理は各自にまかされていることが多いと思いますが、俳優は身体を表現の媒介とし、活動環境がハードだからこそ、俳優のことをよく理解した医師や治療師、トレーナーの専門的サポートが欠かせません。この調査結果は、そうした人たちのネットワークづくりに活かしてまいります。

ワンポイントアドバイス

  声のコンデイションを保つために

生井友紀子
横浜市立大学附属病院耳鼻咽喉科 言語聴覚士・医科学修士

●声のしくみ
 声を出そうとすると、声帯が閉じ、肺から呼気が流れて、声帯が振動します。これが声のもととなります。良い声を保って、これを自由自在に使い、しかも声に芸術性を与えるためには、健康な声帯を正常に振動させる必要があります。


●正常な声帯振動を保つこと
 声帯は筋肉と粘膜でできています。声帯に病気があったり、表面の粘膜が乾いてしまったりした状態では、正常な声帯振動を保つことができず、良い声が出せません。声の使い過ぎ、誤った声の出し方、空気の乾燥や埃、煙草の煙などが、声帯を痛める原因になります。冬季は空気が乾燥し、夏季も冷房で室内が乾燥しますから、加湿器を使うなどの注意が必要です。

また身体の中から声帯に水分を補うために、飲み物を小まめに飲むようにしましょう。ただしカフェインやお酒の飲みすぎは、かえって水分を身体から奪ってしまいます。そのほか、咳・咳払い、逆流性食道炎による胃酸の逆流なども声帯を痛めます。


●声は健康のバロメーター
 良い声は健康の証しです。良い声を保つにはまずは体調管理が一番です。不摂生を避け、十分な睡眠、水分補給と栄養摂取を図ることが良い声の基本です。急激なダイエットや過度の沈黙もよくありません。

●変だと思ったら耳鼻咽喉科医に
 声がおかしいと感じたら、すぐに耳鼻咽喉科医を受診してください。早期の診察により、悪化する前に、医師や言語聴覚士からあなたに合わせた"声の衛生指導"や的確な治療をしてもらうことをお勧めします。

 

※このページは、当団体 『芸術家の健康に関する実態・ニーズ調査』(2012.12発行[PRE委託事業])の結果を広くお知らせするための広報ポスターを転載しています。

★本報告書では、この他に、リハビリ、コンディショニング・トレーニング、日常生活や食事などについて、さまざまなデータが掲載されております。ご興味のある方は、こちらもご覧ください。