芸術家のくすり箱は、ダンサー・音楽家・俳優・スタッフの「ヘルスケア」をサポートし、芸術家と医師・治療師・トレーナーをつなぐNPOです。
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バレエダンサーの職業病とワンポイントアドバイス

日本のプロフェッショナルなバレエ団16団体のアンケートから

 日本でプロフェッショナルに活動するバレエ団16団体のダンサーの方からご協力をいただいた、「芸術家の健康に関する実態・ニーズ調査」。数々の興味深いデータの中から、いくつかをご紹介します。

バレエによる怪我・故障経験者は95.0%

 バレエによる怪我・故障を治療した経験のある人は、なんと95.0%。ほとんどの人が何らかの治療経験をしています。これは[演劇][オーケストラ][伝統芸能]の分野に比べて、突出して大きな数字です。その部位は、「腰」「脚」「ひざ」「足・足指」が多く、特にリフトの多い男性は「腰」、トウシューズを履く女性は「足・足指」の故障が目立ちます。
 怪我・故障の主な原因は、「疲労」(31.0%)、「使いすぎ」(29.5%)と慢性的な原因が6割を占め、突発的に起こる「技術的な失敗」は19.4%です。


治療やリハビリ、金銭面と内容に苦労

 怪我や故障などの際に、みなさんはどんなことに苦労していますか? この調査では、「治療費の負担」が最も多く、次に「良い医師やトレーナーがわからない」「回復期の痛みとのつき合い方、加減がわからない」など治療・リハビリ面が多数上がっています。「休めない」という環境面、「治るか、復帰できるか不安」という声にも共感する方は多いのではないでしょうか。

バレエを理解した医師や治療師と連携を

 ダンサーの健康管理は各自にまかされていることが多いと思いますが、バレエは運動強度や活動環境がハードだからこそ、バレエダンサーのことをよく理解した医師や治療師、トレーナーなどの専門的サポートが欠かせません。この調査結果は、そうした人たちのネットワークづくりに活かしてまいります。

ワンポイントアドバイス

  素早い対応が身体を守る!
怪我した時の[RICE処置]


水村真由美
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科准教授/芸術家のくすり箱理事

バレエダンサーは、足部や足関節の怪我が最も頻繁に起こります。その中で多い怪我が「捻挫」です。受傷してすぐは痛みがひどくなかったり、腫れていなかったりすると、そのまま痛みをこらえて踊り続けてしまう人も多いようですが、それではかえって捻挫を悪化させるだけでなく、回復にも時間がかかってしまいます。応急処置の法則「RICE」を知って、捻挫を起こしてしまったら、早期治療をめざしましょう。

[RICE]とは?

R はRest(安静)です。単に休むだけではなく、患部、すなわち足首を動かさないという意味です。どのくらい動かせるかと足を回したりするのは言語道断。長く座っていられる場所を近くに見つけ、動かないことが大切です。

I はIce(冷却)です。スタジオにはすぐに冷却するためのアイスパックや氷嚢を用意しておきましょう。もし外で捻挫をした場合には、誰かに近くのコンビニエンスストアに氷を買いに行ってもらいましょう。

C はCompression(圧迫)です。捻挫すると患部はすぐに腫れ上がってきます。患部を圧迫することにより炎症が悪化するのを防ぐのです。「I」しながら「C」する。すなわち冷却する物で圧迫するのが効率のよい方法です。

E はElevation(挙上)です。挙上とは、「患部」を「心臓」より高い位置に挙げること。私たちの身体は重力の影響で血液や体液は下に溜まりやすくなっています。捻挫した足首が心臓よりも低いままだと炎症を悪化させます。


 ダンサーは、怪我をしても「踊りたい」「周りに迷惑をかけたくない」と、なかなか休みません。でもきちんと治療しないで練習やリハーサルを続けると、怪我の回復が遅れ、かえって周りに迷惑をかけることもあるのではないでしょうか? 適切な処置を速やかに行い、なるべく早く治癒できるよう、勇気をもって休むことも大切です。

 

※このページは、当団体 『芸術家の健康に関する実態・ニーズ調査』(2012.12発行)の結果広報ポスターを転載しています。

★本報告書では、この他に、リハビリ、コンディショニング・トレーニング、日常生活や食事などについて、さまざまなデータが掲載されております。ご興味のある方は、こちらもご覧ください。