芸術家のくすり箱は、ダンサー・音楽家・俳優・スタッフの「ヘルスケア」をサポートし、芸術家と医師・治療師・トレーナーをつなぐNPOです。
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私流ヘルスケア:志賀育恵さん(バレエダンサー)

お気に入りはストレッチポール!翌日の調子が確実に違います。

『芸術家のくすり箱』がDDDに登場して早1年半。"ダンサーの元気"に役立つヘルスケア情報を、様々な視点からお届けして参りました。
今号からは新企画!! 華々しく活躍するアーティストに聞く"私流ヘルスケア"をお届けします。
初回は、バレエダンサーの志賀育恵さん(東京シティ・バレエ団)。可憐ながらも、力強く存在感のある踊りの源を探ります。

「黒鳥のパ・ド・ドゥ」(『白鳥の湖』より)を踊る志賀さん【撮影: 寺田真希】

----レッスンの頻度は?
「バレエ団にはほとんど毎日通っています。でも、レッスンは週に3回くらいが、気持ちも身体も楽な気がします。レッスン以外に教えに行くのが週4日、これに他のスタジオのリハーサルが入って、毎日夜が遅いんです」

----随分と忙しいですね。その細い身体のどこからエネルギーがでるのでしょう?
「バレエが大好きという気持ちがエネルギーの源です。踊っていることがとにかく楽しくて。食べ物でいえばうなぎと焼肉! 本番数日前になると食べたくなりますね。持久力を保つには、もってこいです」

----身体のために普段はどんなケアをしてますか?
「週1回トレーニングとマッサージをパーソナルトレーナーについて2時間くらい。公演を見てくれるなど、バレエにも理解がある先生で、身体のクセを指摘してくれます。私の疲れ具合や状況によって、マシンを使うこともあれば、トレーニングよりトーク長めでストレス解消したり(笑)、練習している作品の振付でよく使う部位を中心にマッサージしてくれたりもします。だけど、ダンサーがマッサージに行きたい、と思う時期って重なるから、予約が取れないこともあって。そんな時は、とにかく夜更かしだけはしないように気をつけます。睡眠時間が5時間を切ると筋肉が休まらないので」

----愛用のケアグッズは?
「マイブームはメディキュット(英国の医療用ストッキングをルーツにもつ健康ソックス。脚に適度な圧力をかけて血行を良くし、むくみをとる効果がある)。教えに行く移動時間や、ゲネプロのあと本番までの間に履いています。動いているときより、じっとしている方がむくむんです。足指パッドは白鳥の湖など、トゥ・シューズが多い作品の時によく使います。お気に入りはストレッチポール。もともと肩凝りや偏頭痛があるので、痛いなと思ったらすぐ乗るようにしています。長時間のリハーサルの後は腰にも負担がかかっていると思うので、意識して乗ります。調子が悪いときこそ遅い時間でも絶対に乗るようにすると、翌日の調子が違うんです。血行がよくなるからよく眠れますしね!」

ストレッチポール。 志賀さん愛用のストレッチポールは毎日の調子を整えるのに欠かせないスグれもの。少し寝そべるだけでもリラックス効果が。

左から、マッサージオイル・メディキュット・かえるくんの足指パッド。

----これから研修に行かれるオーストラリア・バレエ団のヘルスケアの取り組みは?
「1つの建物にスクールもカンパニーもあって、施設やシステムが充実していると思います」

----日本で活動していく上で、あったらいいなと思うものは?
「パーソナルトレーナーがもっといるといいな。一人ひとりの骨格を把握して、身体を強化しながらケアもしていけば、動かせる範囲が広がったり、怪我も減らせると思います。海外では現役のダンサーであれば、トレーナーについて体づくりをするための時間が活動サイクルの一部として当り前に入っているし、費用負担もないということが、日本と違いますよね。日本では、収入のための仕事、例えば"教え"などをする時間が多くて、自分の身体をつくるための時間がなかなかとれない。疲れから怪我をしてしまって公演に出られなくなるなんてことも少なくない。ダンサーが身体のメンテナンスに時間をかけられるようになれば、日本のバレエ界全体のレベルは間違いなく上がって海外に匹敵するものになると思います」

----今年、「芸術家のくすり箱」のセミナーの健康診断を受診されましたがいかがでしたか?
「自転車(持久力測定)はキツかったー。でも、持久力も骨密度も評価が高くてよかったです。学校を卒業して以来、久しぶりに身長を計ったら2センチ伸びていました!毎晩の風呂上がりの牛乳パワーですね。牛乳大好き(笑)!」

疲れているときは、頭を空っぽにするよう心掛けたり、ツアー中もホテルの部屋を普段の部屋のようにするため、お香やお気に入りの音楽を持ち込んだりするという志賀さん。緊張とリラックスのメリハリをつけることも、本番の集中力に繋がっているのですね。これから研修に行くオーストラリアでも、持ち前の人懐っこい笑顔も手伝って、新しいものをたっぷり吸収して来るはず。パワーアップした志賀さんの素敵な舞台を楽しみに待っています!

志賀育恵(しが・いくえ)8歳よりバレエを始め、89年田中千賀子バレエ団に入団。98年、東京シティ・バレエ団に入団後、ソリストを経て01年『シンデレラ』で初主演。『コッペリア』『くるみ割り人形』『白鳥の湖』『ジゼル』など主なレパートリーで主演を務める。07年舞踊批評家協会新人賞受賞。07年9月より1年間文化庁在外研修員としてオーストラリア・バレエ団へ派遣。

制作:NPO法人芸術家のくすり箱 
[雑誌 『dance dance dance(DDD)』(フラックスパブリッシング発行)2007年7月掲載記事を転載しています。]